お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
ゆっくり、口を開いた。
飴玉が口へと運ばれて、一瞬だけ唇に触れた彼の指。
……ドキドキしすぎて、飴玉の味がよくわからない。
碧は優しく微笑むと、反対側のポケットに手を突っ込んで。
今度は自分の小さなメモ帳とペンを取り出し、メモ帳をびりっと破いた。
そして、その破いたメモ帳とペン、小さなケースに入った飴玉をわたしに手渡して。
「お嬢はここでいい子にお絵描きでもしていてくださいね。
終わったら迎えに来ます」
部屋へと入るように誘導し、中へと入ると襖を閉められた。
……お絵描きって。
わたしはいったい何歳だと思われているんだ。
この間、絵日記なら描いたけどさ……。
あ、そういえばあの絵日記、まだ碧に渡してないや。
いちご大福買ってもらう代わりにあげることになってたんだよね。
あのデートでいろいろあって忘れかけてた。
帰ったら絵日記の写真を全ページ撮って、それから渡そう、っと。
そんなことを思い、わたしは座布団に座った。