お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
熱に浮かされて
目覚ましが鳴るよりも先に目を覚ました。
目を開けて、見えた光景に思わず目をこする。
でも……見えたもの変わらなくて。
わたしはゆっくり起き上がって、そっと近づいた。
近づいたのは、ベッドの脇に座っている──碧。
黒服姿で、ベッドにもたれるように座り……下を向いている。
まったく動かないから、寝ているのかも。
それから次に目に入ったのは、彼のすぐ横に置かれた紙袋。
その紙袋は、わたしの大好きなお店のものだからすぐにわかった。
大好きな、いちご大福が売っているお店の紙袋。
碧……ほ、本物?
本当に本当に、本物!?
そっと碧の頬へと手を伸ばす。
柔らかい頬にちゃんと触れられて、熱いくらいの体温もしっかり感じる。
碧に触れていない反対の手で、自分の頬を引っ張ってみたら、ちゃんと痛みがあって……。
これが夢ではなく現実なんだとわかった。