お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


心臓が早鐘を打つ。
その音だけが、やけによく聞こえてくる。


現状を理解しても、夢ではないのかと疑ってしまう。
だって、碧がわたしに、キス、なんて……。


さらにパニック状態になるわたしの脳内。
動けずに、ただ固まっていると……。




数秒、唇を重ねただけで碧はわたしから離れた。

それから……急に。


力が抜けたようにわたしの左肩に寄りかかってくる。
容赦なくかけられる体重。


びっくりして碧を見れば、少し苦しそうな顔をして荒く呼吸をしていた。


あ、碧!?


伝わってくるのは熱い体温で……まさか、と思い彼のおでこに触れてみた。


触れてみた結果、思った通り……すごく熱い。


熱!?
しかも、かなりの高熱!!


「碧!大丈夫!?」


声をかけてみるが、彼は荒く呼吸するだけで反応はない。


病院……っ!
病院に連れていかないと……!


「だれか呼んでくるから待っててね!」


わたしは碧を両手でぐいっと押して、ベッドにもたれかけさせて。
寒くないように彼を布団でぐるぐる巻きにしてから、部屋を出た。

< 278 / 431 >

この作品をシェア

pagetop