お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
心臓が早鐘を打つ。
その音だけが、やけによく聞こえてくる。
現状を理解しても、夢ではないのかと疑ってしまう。
だって、碧がわたしに、キス、なんて……。
さらにパニック状態になるわたしの脳内。
動けずに、ただ固まっていると……。
数秒、唇を重ねただけで碧はわたしから離れた。
それから……急に。
力が抜けたようにわたしの左肩に寄りかかってくる。
容赦なくかけられる体重。
びっくりして碧を見れば、少し苦しそうな顔をして荒く呼吸をしていた。
あ、碧!?
伝わってくるのは熱い体温で……まさか、と思い彼のおでこに触れてみた。
触れてみた結果、思った通り……すごく熱い。
熱!?
しかも、かなりの高熱!!
「碧!大丈夫!?」
声をかけてみるが、彼は荒く呼吸するだけで反応はない。
病院……っ!
病院に連れていかないと……!
「だれか呼んでくるから待っててね!」
わたしは碧を両手でぐいっと押して、ベッドにもたれかけさせて。
寒くないように彼を布団でぐるぐる巻きにしてから、部屋を出た。