お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
たりない
2日ほど寝ていれば熱は下がり。
3日目は1日安静にして、4日目には完全に元気になった。
「ごちそうさまでした!」
いつも通り食べられた朝食。
手を合わせて、食器を水につけて。走って自分の部屋へ。
走ったのは……碧となんとなく気まずいから。
たぶん、というか絶対、気まずいと思ってるのはわたしだけ。
彼は朝、普通に挨拶してきたし、目が合えばにこりと笑ってくれた。
……わからない。
なにが夢で、なにが現実なのか……ごちゃ混ぜになってさっぱりわからない。
碧にキスされたのは、夢なのかもしれない。
熱の時にわたしがキスしたのも、『好き』って言ったこのうっすらとした記憶も、夢なのかも。
碧が普通に接してくるんじゃ……きっとぜんぶ夢だ。
そう、熱のときに見た夢。
絶対、絶対に夢。
そう思っても……そういう夢を見た以上、碧とはなんとなく気まずい。
もっと、普通にしなくちゃ。
碧も無視されてると思っちゃうよね。
普通にしよう、普通に。
自分の部屋へと戻って、軽く頬を叩く。
そうした時に──。
部屋に響いたスマホの着信音。