お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
「お父さんはこれからやることがあるから、さっそく2人で仲良く遊んでおいで」
お父さんのその言葉を聞いて、私はすぐに碧くんの手をつかんだ。
「わたしの部屋に行こう!」
早く仲良くなりたい。
友だちが1人もいなかったから強くそう思い、強引に碧くんの手を引っ張って、走って部屋へと連れて行く。
「ここがわたしの部屋だよ!お絵かきでもして遊ぼう!」
部屋に着いて襖を閉めて。
彼と向き合った時に……。
「急になにしてくれてんじゃブス。ぶっころすぞ」
低い声が聞こえて、手を振り払われた。
「?」
びっくりして瞬きを繰り返す。
……なんだ、今の。
碧くんが言った?でも声がさっきとぜんぜんちがかったような?
きょろきょろとまわりを見るが、部屋にはわたしと彼のふたり。
ほかには誰もいない。
もしかして、気のせい?
「碧くん、お絵かきして──」
「だまれブス、まじでぶっころすぞ」
わたしの声は低い声に遮られた。
数秒前に聞こえてきた低い声と全く同じ声。
まさか、と思い碧くんに目を向ければ……。
彼は、鋭い目つきでわたしを睨んでいた。