お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
っていうか、なんだ、癒しって……。
「あ、碧も花火やろう!花火!わたしが火つけてあげる!」
碧に手持ち花火を渡して、手に持っているライターを奪おうと手を伸ばす。
が、彼はライターを渡してくれない。
「俺はお嬢を見てるので大丈夫です」
「それじゃ碧がつまんないじゃん」
「つまらなくないです。とっても幸せな時間ですよ」
「……もう!変なこと言ってなくていいから一緒にやろうよ!たくさんあるんだし!」
手持ち花火は、本当にこれでもかというくらいたくさんある。
彼が買ってきたのは、いろんな種類の手持ち花火が入ったセット。しかもそのセットは3セットもあって。
一応ぜんぶ持ってきたけど、さすがにこれは2人でやるには量が多すぎる。
それをさらに1人でやるなんて……いったい何時間かかることやら。
まぁ、ぜんぶ無理にやらなくてもいいんだよね。持ち帰ればいいだけの話だし。
「じゃあ俺はお嬢を見ながらやりますね」
彼はそう言うと受け取った花火に自分で火をつけた。
火花が出ると、わたしはちがう花火を手に持って、その火を自分の花火につける。