お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


「お嬢」


花火を見ていれば、声をかけられて。
見ながら「なに?」と返す。


「来年は、必ず一緒に花火大会に行きましょうね」
「約束ね?」


「約束です」


毎年行っている花火大会は、残念ながらもう終わってしまった。
だから、来年の約束。


……こうして、未来の約束をするのは嬉しいもの。
やっぱり、2人でいるこの当たり前がいつなくなってしまうか怖いから……未来の約束をすると少し安心する。








そんなことを思ったあと、他愛のない話をしながら花火を何本もやって。
2人である程度やったら、線香花火を手に持つ。


「碧、どっちが長く線香花火を長生きさせられるか勝負しよう!」


火をつける前に、碧に言う。


「いいですよ。でもただ勝負するというのも張り合いがないので、なにか賭けでもしましょう」
「賭け?アイス奢りとか?」


「それもいいですが……。負けたほうが人参を1本食べる、っていうのでどうでしょうか?」
「それって、わたしだけが罰ゲームだよね!?碧は人参食べられるじゃん!」


「うそですよ。アイスにしましょうか。負けたほうがアイス奢るってことで」


碧は笑いながら言うと、自分の線香花火に先に火をつけて、そのあとすぐにわたしの線香花火に火をつける。


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