お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


……まったく。
碧のバカ。


心の中でつぶやいて、わたしは線香花火に集中。


落とさないように気をつけなきゃ。
落とさないように……。
勝って、碧に1番高いアイスを奢ってもらうんだ。



しゃがみこんで、火花をそっと見守る。
慎重になりすぎて、つい無言になってしまう。


でもなにか話すと落としちゃうかもしれないしな……。


そう思った、すぐあと。
『なんでキスしようとしたの?』と碧に聞くのは今なんじゃ?、とふと思った。


今なら聞きやすいような……気がする。
やっぱり、知りたい。碧との関係を少しでも進めたいから、あれはどうしても知っておきたい。


今、ちゃんと聞いておこう。


少し緊張しながらも、口を開こうとした時に──。







「お嬢」


先に口を開いたのは、碧だった。


「な、なに……?」


パチパチと燃える花火を見ながら、そう返す。
そうすると彼は、なぜか口を閉じた。


横目で見れば、すごく真剣そうな表情をしていて。
変に緊張しながら次の言葉を待てば、彼は……──。














「熱の時……俺に、“好き”って言いましたよね?あれはどういう“好き”なんですか?」


耳に届いたのは、まさかの言葉だった。
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