お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


その言葉に、心臓が大きく飛び跳ねる。


そして、体がビクッと動いた衝撃で……ぽとり、と地面に落ちた線香花火。

それは悲しく、光を失った。


勝負はついた、けれど……そんなの、どうでもよくなる。




……す、す、す、好き?
言った?わたしが、碧に?


熱の時……?
……熱の時!?


熱の時に見た夢。
わたしは……碧に好きって言った。
でもあれは夢で……。


「…………」


いろいろ考えて、変な汗が出てくる。


そして、とある考えが頭をよぎった。

碧に『好き』と言ったり、キスしたりしたのは……夢なんかじゃなかったのではないか、と。


心臓が、大きな音を立てて動く。


……碧、熱が下がったあと、普通に接してきてたから、あれは夢だと思うじゃん。


碧がキスしてきたのも、わたしがキスしたのも、『好き』って言ったのも現実だったとか……。
やばい、なんて返したらいいものか……。


言葉を考えても、なにも思い浮かばない。
『家族として好きだよ』とは言いたくないし、でも『1人の男性として好きなの』と言うのも……。

振られたら怖い。
振られたら、碧といつもみたいに話せなくなってしまうかもしれない。

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