お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


「碧っ、もういいよ……」


震える声。
必死に声を振り絞って、彼の学ランの裾をつかんだ。


わたしの声が届いたのか、碧はピタリと動きを停止。
こちらへと視線を向けた彼は……心配そうな表情。


さっき見たようなひどく冷たい目ではなくて、ほっとひと安心。

──したのもつかの間。


さっき、碧に投げ飛ばされたメガネをかけた男性が、苦しそうに息をしながら自分のスーツのジャケットの内側に手を入れて。
取り出した、拳銃。


こちらに向けられる直前で、碧がすぐに反応。
碧は素早く自分の学ランの内側から拳銃を取り出して、それをメガネをかけた男性の頭に突きつけた。


「ぶっ殺されたくなければ動くんじゃねぇぞ、クソメガネ」


背筋が凍りそうなほど低い声。
碧の声がこの場に静かに響けば、「……はい」と小さく返事が聞こえて、メガネをかけた男性は動かなくなった。


メガネをかけた男性の隣で、苦しそうに息をしていた金髪の男性はあまりの恐怖で気絶。
それを確認した碧は、拳銃を奪うとわたしへと再び視線を向ける。

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