お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


「大丈夫ですよ!碧は極道が大好きなんで、ぜひ話してあげてください!」


わたしはそう返して、「あっち行こう」と健くんと目を合わせる。


「そうだね。邪魔しちゃ悪いし、行こうか」


健くんは笑いながら、わたしの肩をさらに引き寄せた。
それを見た碧は、「クソ猿……てめぇ」と健くんを鋭い目つきで睨みつける。


その様子は、隣にいる里古さんには見えていないみたいで。


「わたし、健くんとペアなの!じゃあね、碧!」


手を振って、すぐにこの場を去る。
「いち、に」の合図で歩いていって……少し離れたら立ちどまり、うしろを振り返った。




里古さんは、碧と楽しそうに話している様子。


それを見て、また胸がちくりと痛む。

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