お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
「もちろん!」
わたしは大きくうなずいた。
碧のことを応援できないのは、はじめからわかっている。クラスごとで戦うから、碧とは敵同士。
敵だから、残念だけど応援はできない。
「え、ほんと?」
なぜか、びっくりしている健くん。
わたしが同じクラスの味方より、幼なじみだからって理由で敵を応援するとでも思ってたのかな。
「碧はちがうクラスだから敵だよ?」
「……うん、そうだけどさ」
「いっぱい応援するから頑張ってね!」
にこりと笑って言えば、健くんは急に真剣な表情になって。
「……ねぇ、茉白ちゃん」
わたしを見つめて、逸らさない。
なんの話をされるのかとドキドキしていれば。
「さっき、“なんでもする”って言ったじゃん?」
なぜか、数十分前のことを確認してくる。
わたしがさっき言ったこと、数十分前のことだからさすがに忘れてない。
だからこくんとうなずけば、今度は──。
「俺が、もし碧くんに勝ったら……茉白ちゃん、俺にご褒美のキスしてよ」
耳を疑ってしまうような言葉が聞こえてきたのだった。