お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


心臓がドキリと鳴る。


喉から手が出るほど、って……。
なんで……?なんでそんなにほしいと思うの?


キスは……普通は恋人がするもので。
って!わたしと碧は恋人じゃなくてもキスしちゃったけど……!




「お願い、茉白ちゃん」
「…………っ」


「なんでもするって言ってくれたけど……さすがにだめ?」



握られた手は、わたしの指と指の間に入り込み、絡んで……強く握る。


なんでもする、って言ったのはわたしだけど……!
わたしだけどさ!?
き、キスなんて、さすがに……!


「茉白ちゃんからのご褒美があれば、俺、すっごく頑張るよ。だからお願い」
「…………」


キラキラと目を輝かせて、お願いビーム。

その目を見れば、『やだ』なんて言えるわけがなかった。






「……いいよ」


数秒間黙ったあとに、わたしはそう返す。


……よく考えれば、口にするだけがキスじゃない。
ほっぺや手にするのも、キスと言える。


恥ずかしいけど、なんでもするって言ったのはわたしだし、健くんが頑張るのであったら……と思って返事をした。

< 338 / 431 >

この作品をシェア

pagetop