お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
心臓がドキリと鳴る。
喉から手が出るほど、って……。
なんで……?なんでそんなにほしいと思うの?
キスは……普通は恋人がするもので。
って!わたしと碧は恋人じゃなくてもキスしちゃったけど……!
「お願い、茉白ちゃん」
「…………っ」
「なんでもするって言ってくれたけど……さすがにだめ?」
握られた手は、わたしの指と指の間に入り込み、絡んで……強く握る。
なんでもする、って言ったのはわたしだけど……!
わたしだけどさ!?
き、キスなんて、さすがに……!
「茉白ちゃんからのご褒美があれば、俺、すっごく頑張るよ。だからお願い」
「…………」
キラキラと目を輝かせて、お願いビーム。
その目を見れば、『やだ』なんて言えるわけがなかった。
「……いいよ」
数秒間黙ったあとに、わたしはそう返す。
……よく考えれば、口にするだけがキスじゃない。
ほっぺや手にするのも、キスと言える。
恥ずかしいけど、なんでもするって言ったのはわたしだし、健くんが頑張るのであったら……と思って返事をした。