お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


「お嬢、怪我はありませんか?」
「……だ、大丈夫」


「1人にして本当にすみませんでした。数秒ならお嬢を1人にしても大丈夫だと思ってそばを離れた俺の判断ミスです」
「あ、碧は──」


ぜんぶ言い切る前に、聞こえてきたスマホの着信音。
碧は、「すみません」とぺこりと頭を下げてからスマホをポケットの中から取り出して、操作。


彼は電話をはじめるが、ちっとも会話が頭に入ってこなかった。


碧は、右手に拳銃を持っていて、メガネをかけた男性の頭に突きつけたままだから。


まさか、碧も拳銃を持っていたなんて。
ヤクザの世界では普通のことなのかもしれないけど……。


あれで撃たれたら死んじゃうかもしれないんだよね?
もしさっき撃たれていたかも、と考えるとゾッとする。


そんな危険なものを碧も持っていたなんて、知らなかった。

いったいいつから持ってたの?
もしかして中学の時もわたしが知らないだけで、持ってた?


わたしはいろいろ知らなすぎる。
碧はずっとそばにいたのに。


わたしが狙われるかもしれないから、ボディーガードをしてずっと守っていてくれたことにも気づかないなんて。


碧の電話はすぐに終わったが、なにも話さず。

数十分後にきた翔琉さんの車にわたしは乗せられて、碧はこの場に残ったのだった。

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