お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。



***


入学式はわたしは遅刻、碧は欠席。
先生に怒られたあとにクラス表を確認すれば、わたしは1年1組、碧は1年2組とクラスが離れ……。
友だちが1人もできることなく高校生の初日は終わった。


なんという最悪なスタート。
いやいや、まだ初日。諦めるのはまだ早いよね。


なんて自分を励ましながら、迎えに来てくれた翔琉さんの車に乗って帰宅。


碧に、助けに来てくれたお礼と迷惑をかけたことをちゃんと謝らなくちゃ。


「お嬢、碧ならまだ帰ってきてませんよ」


帰宅して真っ先に碧の部屋へと行こうとすれば、それに気づいたかのように翔琉さんが声をかけてきた。


「あ……そう、なんだ」


碧だけあの場に残ったから、不安になってくる。
きっとわたしが知らないだけで、今までにも彼は危険な目にあっているのかもしれないけど……。


「やることが終わればすぐに帰ってくると思うので、お嬢は部屋でゆっくりしていてください」


碧が帰ってきたらお茶と菓子でも持っていかせます、と付け足してにこりと笑う翔琉さん。


“やること”というのは若頭の仕事のこと、だろう。
やっぱり心配だけど、わたしにできることはなにもなく。大人しく自分の部屋へと向かった。


碧はきっとすぐに帰っくる。
そう信じて待っていた、が……──彼が帰ってきたのは23時を過ぎた頃。

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