お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
「……お嬢は“弱み”なんかじゃありません」
「え?」
聞こえてきた言葉に首をかしげたわたし。
「確かに、お嬢は組長の娘ということもあり、鷹樹組と敵対するやつらに狙われやすいですが……決して、“弱み”なんかじゃありませんよ。
お嬢は鷹樹組の宝であり、女神です。鷹樹組はお嬢が大切なんです。俺はお嬢がなによりも大切なので、守りたくて自分の意思でそばにいるんですよ」
だから謝らないでください、と付け足す彼。
……碧は、無理してわたしのそばにいるわけじゃなかったんだ。
っていうか、なんだ。
わたしが鷹樹組の宝であり女神って。
弱みじゃない、と言ってくれるのは嬉しいけど……そう言われるのはなんだか恥ずかしい。
「あ、ありがとう?」
なんて答えていいのかわからず、返事は疑問形。
「今後は今日みたいなことがないよう、俺は全力でお嬢を守ります。
これから通学は電車ではなく、車にしましょう。あの満員電車には危険がたくさんありすぎます。お嬢が万が一ほかの野郎に触られたら、と考えるだけでも俺は怒り狂いそうですし、車のほうが安全でいいです。明日からの送迎は俺から組員の誰かに頼んでおきますから──」
長々と続く碧の話。
いつまで玄関に正座でいる気なのか。