お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


いよいよわたしたちの前のペアにバトンがまわり……。
緊張で心臓が飛び出そう。


再び大きく深呼吸をしていると。


「今までみんなで練習頑張ってきたんだから、大丈夫だよ」


上から降ってくる、優しい声。

頭の上にぽんっと大きな手が置かれて、すぐに肩に手をまわされた。


……健くん。


その言葉に、少し落ち着きを取り戻す。
わたしは健くんの背中に手をまわして、バトンをいつでも受け取れるように準備。





そして、前のペアが走ってきて。

わたしは、確かにそのバトンを受け取って、「せーの!」という合図で健くんと走り出す。


足を動かす時は、外側の足から。
「いち、に」と声を出しながら足を動かした。


ちゃんと、走れてる。
ちゃんと、バトンも受け取れた。


その嬉しさからか、最後まで転ばずにしっかり走りきれるような気がして。


ひたすら足をリズムよく動かし、次にバトンを渡すペアがだんだん近くなってきた。









その時に──あと少しの距離だと思ったのか、わたしは油断したのかもしれない。
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