お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
走っていって、視界の端に入ったのは……碧と、里古さん。
碧は、里古さんを抱きかかえて……テントのほうへと走っていく。
その姿を見て、足を動かすリズムが狂った。
なんとかバトンは次に渡せたが、リズムが狂ったせいでうまくとまれなくなって……体が、前へと倒れた。
咄嗟に手をついたから顔をぶつけなくてすんだけど、膝と手が痛い。
そうだ、わたしより健くんは……!
「茉白ちゃん大丈夫!?」
わたしより先に声を出した彼。
「とりあえず邪魔になるから移動しよう」
べりっと足についたベルトをはずすと、彼はわたしを抱きかかえて、邪魔にならないところに避難。
健くんはすぐにわたしをおろすと「怪我してない!?」とわたしをよく見た。
転んでも怪我をしないように半ズボンの上に長ズボンを履いて競技に出ていたため、膝を擦りむいたりとかはしていない。
でも、手は擦りむいていて血が出ていた。