お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
「碧!もういいから早く上がってよ!」
「お嬢、俺の話ちゃんと聞いてください」
「もう聞いた!だから立って!」
強い力で引っ張っても立ち上がってくれず。
彼は、真剣な表情で「お嬢」とわたしを呼んだ。
パチリともう一度まっすぐに視線が合うと。
「俺のこと、怖くないですか?」
そんなことを聞くのは……碧が怒った姿をわたしが見たから、だろうか。
低い声に鋭い目つき、あの時の碧ははじめて見た姿だった。
でも。
「怖くないよ」
わたしは彼の瞳を逸らさずに答えた。
「目の前であぁいう暴力とか拳銃を見たのは確かに怖かったけど……。碧のことを今も怖いとは思ってないよ。
碧はわたしを守ってくれたもん。いつも守ってくれて……今日も助けてくれて本当の本当にありがとう!」
にこりと笑えば、碧はどこかほっとした表情に。