お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
「いい?茉白ちゃん」
優しい笑顔で聞かれて、断ることなんてできずこくんとうなずく。
そして、2人で救護テントへと向かった。
救護テントは、遠くから見てもどこにあるのかわかりやすい。
横幕がついていて、テントの中が見えないようになっているから。
そのテントへと到着して、中へと入ると──思わず立ちどまる。
まず1番最初に見えたのは、碧。
それから長椅子に横たわる、里古さんの姿。
里古さんは青白い顔色をしていて……横たわりながら、碧の手を握っている。
わたしは、一瞬で二人三脚の競技中に見た光景を思い出した。
碧が里古さんを抱きかかえていった、あの光景を……。
“見たくない”。
心の中で強くそう思って、わたしは1歩うしろにさがる、と。
急に、肩に手を置かれて心臓が大きく跳ねた。
「あなたたちも怪我してるの?そこに立ってないで遠慮なく入って入って」
わたしの肩に手を置いたのは、白衣を着た保健の先生。
先生は袋に入ったたくさんの氷を持っていて、走ってきたのか少し息が乱れていた。