お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


「あの、わたし、やっぱり大丈夫みたいです、なんでもないです」


救護テントの中へと入りずらくて、入りたくなくて、そう返すが。


「手、擦りむいてるじゃない!今手当してあげるから、中に入りなさい!」


手の擦りむいているところを見られて、強制的にわたしと健くんの2人は救護テントの中へと押し込まれてしまった。







バチッと目が合った、碧。
わたしは見ていられなくて、すぐに逸らす。


「ここに座って」


先生に碧たちと少し離れたとこにある椅子に座るようにと促され、わたしは下を向いて座った。


あの2人、手……つないでた。


思い出すと涙が溢れそうになる。
別に、碧とわたしは付き合っていないし、ただの幼なじみだから、碧がだれと手をつないでもいいのに……。



どうしても、思ってしまう。

あの手はわたしのものだから、触れられるのはわたしだけがいい、って。


フラれたわたしはそんなことを思ってはいけない。
早く気持ちを消さないと……ずっと心が痛い。

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