お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
「せんせー、俺が茉白ちゃんの手当してもいい?」
下を向いてぎゅっと拳を強く握っていれば、わたしの頭の上におかれた大きな手。
先生に聞いたのは、健くん。
「あなたは怪我してない?大丈夫?」
「俺は付き添いだからだいじょーぶ」
「じゃあお願いね。はいこれ、消毒液と絆創膏」
先生と健くんのやり取りが聞こえてきたあとに、健くんは隣に座って。
「茉白ちゃん、手出して」と優しい声で言われるから、わたしは擦りむいてしまったほうの手をそっと出した。
……消毒液が、手に染みる。
傷は大したことないのに、すごく痛い。
涙を必死に堪えていたけれど、瞬きをすればこぼれ落ちてしまって慌てて目を擦る。
……碧に見られちゃう。
泣いてるところなんて見られたくない。
碧にはこれ以上気を使わせたくないし、気まずくなりたくないよ……。
そう思っていれば、健くんはわたしから碧を隠すように立ってくれた。