お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


「里古さんは熱中症じゃなくて貧血っぽいわね。しばらくはここで休んでなさい。休んで回復しないようだったら、無理しないように帰宅になるからね。
小鳥遊くんは戻っていいわよ」
「俺はもう少しここにいます。心配なので……」




先生と碧の会話が聞こえてきて、その間に手当は終了。


わたしは下を向いたまま先生にぺこりと頭を下げて、健くんと2人でテントを出た。









ただ足を動かしていると、聞こえてきたのは。


「茉白ちゃん」


わたしを呼ぶ、健くんの声で。
ゆっくり顔をあげれば、確かに目が合った。


まっすぐな瞳。
その瞳と目が合えば、彼は大きく息を吸って。














「俺なら、気持ちはちゃんと伝えるし、茉白ちゃんを絶対泣かせない。茉白ちゃんをずっと笑顔にするって約束する。


だから……──俺と、付き合わない?」






次に耳に届いた声は、まさかの言葉だった。
< 383 / 431 >

この作品をシェア

pagetop