お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
「……俺、帰る前にずっと考えてたんです。あんなところを目の前で見せたから、お嬢に怖がられて嫌われたらどうしようって。
だから、帰ってきてお嬢が玄関で待っていてくれて死ぬほど嬉しかった」
弱々しく聞こえてくる声。
……そんなに心配だったなんて。
「怖がらないし嫌わないよ!」
「俺、お嬢に嫌われたらもう生きていけません」
「そ、そんな大袈裟な……!」
「大袈裟じゃないです。お嬢に嫌われたら死ぬ自信しかありません」
どんな自信だ。
わたしに嫌われただけで死ぬって!
今日見てわかったけど、碧はかなり強い。そんなことで死ぬわけないよ。
「もう、早く立って!お風呂沸いてるから入ってきたら?お腹すいてたら先にご飯でもいいし!夕飯は翔琉さんが作ってくれたカレーだよ!」
碧の腕を全力で引っ張れば、やっと立ち上がって家にあがってくれる。
本当にやっとだ。
「先に風呂入ってきますね。お嬢はもうすぐ寝る時間だと思うので、部屋に戻って休んでください。お出迎え、本当にありがとうございました」
ぺこりと頭を下げる碧。