お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
今の低い声は、碧くんの声だったんだ。
な、なんか……さっきとぜんぜん声も態度もちがうような?おとなしそうな子だと思ったのに。
睨まれるのは少し怖いけれど、それより気になることは。
「……碧くん?」
「だまれって言ってんだろ」
「ぶすってなぁに?ぶっころすって?」
わたしは、その言葉の意味を知らない。
だから気になって聞いてみた。
「おまえ、同い年のくせに頭悪すぎだろ。俺はバカとは仲良くしたくねぇ」
はぁ、とため息をつく碧くん。
いろんな言葉を知っていて大人だ。
……わたしのことをバカにしてるみたいだけど。
「ちゃんとべんきょーするもんっ!碧くんはこれ読んでて!」
本棚から絵本を数冊取りだして碧くんに渡して、わたしはこのあいだ買ってもらったばかりのひらがなのワークを開く。
わたしが勉強をして頭がよくなれば、碧くんが遊び相手になってくれると思ったから。
せっかく2人でいるのに、やっていることは別々のこと。