お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
わたしは、いつも0時には絶対に寝るようにしている。
睡魔に負けて0時になる前に寝ることも少なくなくて、早く寝るぶんはきちんと早起き。昔から、“早寝早起き朝ごはん”をしっかり守っているのだった。
碧ともう少し一緒にいたいところだけど……碧が帰ってきて安心したせいか、また眠気がやってきて眠い。
「じゃあ、わたしはもう寝るね」
「はい。おやすみなさい、お嬢」
「おやすみ」
そう返してわたしは自分の部屋へと向かう。
けど、数歩足を進めたところでピタリと立ち止まってうしろを振り向いた。
彼はまだそこにいてこっちを見ていて。
わたしは口を開く。
「あのね、わたし……碧と5歳の時から一緒にいたから、碧のことぜんぶ知った気になってたの。まだ知らないところがあるなんて、本当にびっくりでね……思ったんだ。
若頭としての碧は全く知らないから、ちゃんとぜんぶ知りたいなって」
「……それが俺のやばい一面でも、ですか?」
「ちゃんと知っておきたい。碧は……大切な人だから」
なんだかすごく恥ずかしい。
今まで面と向かって“大切な人”って言ったことがなかったから。