お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
想いと油断
お昼休憩を知らせる放送が流れれば、碧はわたしの目元をもう一度拭ってくれて。
そのあと、目の前に手を差し伸べてきてその手をとる。
強く手をつないだら、2人で屋上を出て階段をおりた。
両想いで手をつなぐのは、嬉しい気持ちが溢れる。
ずっと、手をつないでいたいけど、その前にちゃんとしなくちゃいけないことが……。
「碧」
「なに?」
「わたし……休憩の前に、健くんとちゃんと話してくるね」
このままじゃだめだ。
健くんのことを曖昧にしたまま、碧と一緒にいるなんて……。
「……俺も行く」
「ううん。1人で行くよ」
「…………」
「大丈夫だよ、行ってくるね」
わたしは碧を見つめてそう言えば、彼は渋々手を離してくれる。
「碧はお弁当持って待っててね。すぐ戻るから」
最後にそう言って、わたしは走って昇降口へと向かった。