お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


「ありがとう、茉白ちゃん。碧くんが待ってるから、早く教室に戻ったほうがいいよ」


にこりと笑うと、優しく背中を押してくれる。


「えっ、健くんも一緒に──」
「俺はあとから教室に戻るから」


「……じゃあ、先に戻るね」
「うん。バイバイ、茉白ちゃん」



健くんはひらひらと手を振ってくれて、わたしは背を向けて歩いた。





……よかった。
告白の返事をするということは、もう健くんと友だちに戻れない可能性も充分にあったわけで……。


縁を切られなくて本当によかった。
大切な友だちを、1人失わなくてよかった……。


最後まで、健くんの優しさに助けられた。





そう思いながら歩いていれば、近くの駐車場に見えた2人の若い男性。
その2人は私服姿で、体育祭を見に来ている人なんだとわかった。


駐車場で、なにやらうろうろしていて……困っているように見える。


……なにか、探してるのかな?
声をかけるべき……?




一瞬立ちどまり、考えていると。


「すみません!」


わたしに気づいた男性2人は声をかけてきて、こちらに駆け寄ってきた。

< 410 / 431 >

この作品をシェア

pagetop