お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
急に気づかれて、声をかけられるものだからびっくり。
「あの、俺ら車の鍵をどこかに落としちゃったみたいで……。落し物がどこに届くかとかわかりますか?」
青いアロハシャツを着た男性が聞いてくる。
……車の鍵、落としちゃったんだ。
それは帰れないし、なかなか大変なことじゃ!?
「あの、今先生に──っ!」
声を出した時だ。
──急に、背後にもう1人の男性がまわって口元をおさえられたのは。
口元と鼻にハンカチのような布を押し当てられて、手を強い力で拘束される。
な、な、なに!?
なにが起きて!?
急すぎる出来事。
脳内はパニック状態になる。
パニック状態になっても、ひとつだけすぐにわかったのは……この状況はかなりやばいということ。
「んーっ!!」
大きな声を出そうとするが口元をおさえられているせいで出なくて、手も強い力で拘束されているせいで動かせない。
唯一動かせるのは、足だけ。
わたしは、精一杯足を動かした。
前にいる男性の足を必死に蹴って、脱出しようと頑張る。
……──けど、急になぜか力が出なくなって意識が遠のいていく。
な、なに、これ……。
なんとか意識をつなぎとめようと頑張ったが、それは無理で……わたしは、意識を失った。