お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
……やばい。
どうしよう……!
すぐに体を動かそうとしたが、ぜんぜん動かない。
まるで、石になったかのように体がいうことをきかない。
どうなってるの!?
それでも必死に体を動かそうとしていると、目が合った人物。
青いアロハシャツを着た、男性。
学校で見かけた人だ。
「おまえら、お姫様が目覚めたぞ」
その男性はまわりの人たちに知らせると、わたしのほうへと近づいてくる。
わたしは逃げようと必死に動こうとしたが……やっぱり、動けなくて。
……逃げられないっ!
「強いクスリを使ったから、しばらくは動けないよ」
隣まで来れば、にこりと笑うアロハシャツを着た男性。
瞬間、ゾクッと鳥肌が立つ。
「ヤクザの娘、ってだけでこんな目にあうなんて可哀想に」
こちらに伸びてくる手。
避けたくても避けられなくて、ぎゅっと目をつむる。
無遠慮に頬にベタベタと触られて……気持ち悪い。
「おまえ、ぜんぜん可哀想とか思ってないだろ。その子で遊ぶの楽しみにしてたくせに嘘言うなよなー」
横から聞こえてきた声。