お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
なにかが壊されるような、荒々しい音がこの場に響いた。
その音に、わたしの上に覆いかぶさっていた男性の手がとまる。
……な、なに!?
なにが起きて!?
わたしはすぐに目を開けた。
すると、ほぼ同時に……。
──バンッ!!
と、乾いた音が耳に届いた。
その音は、銃声。
銃弾は、わたしの上に覆いかぶさっていた男性の腕をかすった。
男性の腕からは血が流れ出て、青ざめた顔をして扉のほうを見ている。
この男性だけじゃない。
……この場にいる全員が、青ざめた顔をしていて同じところを見て固まっていた。
「動けば殺す」
次に、低い声がこの場に響く。
この声は──わたしの大好きな人、碧の声。