お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
「おまえ、上着貸せ」
碧がある組員に言えば、ジャケットを脱いで。
その受け取ったジャケットはわたしにかけられた。
「……碧っ」
碧を見れば、心に安心感が広がって次々に溢れる涙。
「茉白、怪我は?」
「……ない」
心配そう聞いてくる碧に、わたしは小さく答える。
碧に触れてもっと安心したいのに、体が動かなくて触れられない。
……早く触れたいよ。
「碧っ、体が動かないよ……。もっと近くに来て……」
声を出せば、碧はわたしの涙を拭ってくれて。
そのあとに、すぐ抱きかかえられた。
そして彼は歩いていって、車に乗せられる。