お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
雨と傘


「おかしい……おかしいよ、碧」


お昼休み、屋上にて。
わたしはお弁当を食べる手をとめて、頭を悩ませる。


屋上はわたしと碧の2人。
ここは立ち入り禁止だったが、碧が細い棒で開錠した。


ほんの数秒で開けたからびっくり。
まさか、こんなことまでできるとは……。


ここにいることが見つかれば怒られること間違いなしだが、2人きりになれる場所は校内ではあまりないからここにいる。


「なんで、友だちが1人もできないんだろう」


ぽつりとつぶやくように言った。
これが、わたしの今の1番の悩み。


高校に入学して、1週間が経過。
それなのに、わたしにはまだ友だちが1人もできていない。


長いこと友だちがいなかったものだから、どうやって仲良くなるのかさっぱりわからなくて……とりあえずまわりを観察しよう、と思っていたら1週間がたっていた。


もう女子の仲がいいグループがいくつかできていて、心は焦るばかり。


どうしよう、やっぱり入学式から遅刻したからやばい人だと思われてるのかな……。
だからだれからも話しかけてもらえないの?


いやいや、わたしよりもやばい人はいたよ。
わたしの隣の席の人、その人は入学式から今日までずっと欠席。

まだ一度も会ったことがない。

< 42 / 431 >

この作品をシェア

pagetop