お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
「……お嬢」
上から降ってくる声に、「なに?」と返すと。
「今日、お嬢の気持ちを知れて本当に嬉しかったです。それはもう今まで生きてきた中で、今日が1番幸せだと言えるくらい、本当の本当に幸せでした」
急に、少し落ちる声のトーン。
わたしは、碧に抱きついたまま顔を上げた。
至近距離で目が合うと……。
「お嬢、もう一度よく考えてください。
俺は、ヤクザの男です。俺は人の恨みを買ってる自信しかないので……俺といれば、お嬢は今日のような危険な目にまたあってしまうかもしれません。
それだけじゃありません。ヤクザの男なんて、お嬢に心配かけることまちがいなしですし、いつ死ぬかもわかりません。
……本当にそんな男でいいのか、もう一度よく考えてください」
真剣な瞳でわたしを見つめてくる彼。
……考えるって、今日碧に伝えた気持ちを取り消すことを考えろ、ってこと?
……碧は、わたしを想ってくれているからそう言ってくれているんだろう。
でも、そんな悲しいこと言わないでよ……。