お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
──その、すぐあとのこと。
「おまえたち2人が本気なら、なにも言うことはないな」
近くから聞こえてきた声に、心臓が大きく跳ねる。
聞こえてきたのは、お父さんの声で。
振り向けば、少し離れたところにいた和服姿のお父さん。
み、見られてた!?
しかも、聞かれてた!?
「……組長っ!」
碧もお父さんの気配に気づかなかったみたいで、慌ててわたしを引き離して背筋を伸ばす。
ど、どうしよう……!
お父さんになにか言われるんじゃ……。
なんて思ったが、ついさっきの言葉を思い出した。
それは、批判的な言葉ではなかった、ような……。
わたしも背筋を伸ばしてピシッと立つけど、目の前のお父さんはなんだかすごく優しい表情をしていた。
「2人が想い合っているのは、昔から知っていたよ。だから、2人が本気なら反対はしない」
お父さんはわたしと碧を見つめて、確かにそう言う。