お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
……碧?
もう一度こっちを見てほしくて、わたしは碧の頬へと手を伸ばし、彼の右頬に触れる。
「碧」
彼の名前を呼んで、声をかければ……再び合わせてくれた視線。
ここに電気はなく、月明かりしかわたしたちを照らすものはない、けど。
気のせいか、碧の頬は少し赤いような気がした。
「わたしのぜんぶ、碧にあげる。
だから、碧のこと知らないところがひとつもないくらい、ぜんぶを知りたいの……。
碧のぜんぶ、わたしにちょうだい……」
目を見つめたたま、まっすぐに声を出す。
そうすると、彼は口角を上げて。
「いくらでもおしえるし、俺のぜんぶは茉白にやるよ」
確かに、返してくれる。
お互いの目を見て笑い合い……また、唇を重ねあった。
だれよりも、わたしが碧のことを知っていたい。
碧は、大切で……大好きな人だから。
これからも2人で笑いあって、たくさん知らないところを見つけていこう。
ぜんぶ、お互いの知らないところがないくらい。
Fin