お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
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5時間目の授業が始まった頃からぽつぽつと降り始めた雨。
その雨はだんだん強くなって……下校の時間になるまでやむことはなかった。
「どうしよ!あたし傘持ってきてなかったかも!?」
わたしの前の席の鈴宮 凛(すずみや りん)さんはゴソゴソと自分の鞄の中を漁る、が。
数秒後には「やっぱりない……」と小さくつぶやいた。
その声が聞こえてきてすぐに自分の鞄の中を見る。
中には、ちゃんと入れておいた薄ピンクの折りたたみ傘。
入学式にやばい人たちに誘拐されそうになって、結局通学は車になったから傘はなくても大丈夫。
まぁ、車は目立つから学校から少しだけ離れたところで待っていてもらっているけれど。今日は雨の予報だと碧に前もって伝えてあるから、彼も傘を持っているはず。
わたしは碧の傘に入れてもらえばいいし……これは、チャンスだ。
この傘を渡して、鈴宮さんと仲良くなるチャンス。
そして、碧と同じ傘に入って彼との距離を縮めるチャンス。
よし、頑張れわたし!
大きく息を吸って。
「あの!」
とんとん、と鈴宮さんの肩を叩いて声をかける。
すると、ショートカットの髪を揺らして振り向いて。
大きな瞳と目が合った。