お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
わぁ……。
思わず見とれてしまうようなほど美人な女の子。
キレイな子だなとは思っていたけど、近くで見るともっとキレイ。
「あの、これ、よかったら……」
差し出した折りたたみ傘。
「え!?いいの!?鷹樹さんは傘なくて大丈夫!?」
「だ、大丈夫。わたしは車だから……」
「ほんとに借りちゃうよ!?」
「どうぞ」
「ありがとう!」
鈴宮さんが笑顔で受け取ってくれたすぐあとに。
教室の前の扉のほうに見えた碧の姿。
一緒に帰るから、教室まで迎えに来てくれたんだ。
「じ、じゃあ、わたしは帰るね」
「ほんとにありがとう、鷹樹さん!傘は明日返すね!バイバイ!」
笑顔で手を振ってくれて、わたしも同じように手を振ってから鞄を持ってすぐに教室を出た。
心臓がドキドキと加速してる。
す、すごく緊張した……。
ちゃんとうまく話せてたかな?
とにかく嬉しかった。
鈴宮さんと少しだけだけど話せて、“鷹樹さん”って呼んでもらえて。
「ご機嫌ですね。なにかいいことでもありました?」
思わずにこにことしていれば、碧はそんなわたしの顔を見て聞いてきた。