お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


わぁ……。


思わず見とれてしまうようなほど美人な女の子。
キレイな子だなとは思っていたけど、近くで見るともっとキレイ。


「あの、これ、よかったら……」


差し出した折りたたみ傘。


「え!?いいの!?鷹樹さんは傘なくて大丈夫!?」
「だ、大丈夫。わたしは車だから……」


「ほんとに借りちゃうよ!?」
「どうぞ」


「ありがとう!」


鈴宮さんが笑顔で受け取ってくれたすぐあとに。
教室の前の扉のほうに見えた碧の姿。
一緒に帰るから、教室まで迎えに来てくれたんだ。


「じ、じゃあ、わたしは帰るね」
「ほんとにありがとう、鷹樹さん!傘は明日返すね!バイバイ!」


笑顔で手を振ってくれて、わたしも同じように手を振ってから鞄を持ってすぐに教室を出た。


心臓がドキドキと加速してる。


す、すごく緊張した……。
ちゃんとうまく話せてたかな?


とにかく嬉しかった。
鈴宮さんと少しだけだけど話せて、“鷹樹さん”って呼んでもらえて。


「ご機嫌ですね。なにかいいことでもありました?」


思わずにこにことしていれば、碧はそんなわたしの顔を見て聞いてきた。

< 46 / 431 >

この作品をシェア

pagetop