お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


「呼び方、気をつけてよね」


わたしは小さな声で碧に注意。


「俺、今言ってました?」
「言ってた!」


「気をつけます」


まぁ、わざとじゃないならいいや。
さすがに何回も間違えるのはまわりに気づかれそうでやばいけど。


「あ!そういえばね」


急に思い出したことがあって、話を変える。


「授業中思い出したんだけど、今日はマンガの発売日でね。帰る前に本屋さんに寄ってもらおうかなって思ってるんだけど、いい?」


わたしは少女マンガが大好き。
今日は、1番大好きなのマンガの新刊の発売日だと6時間目の授業中に突然思い出して、これは今日買いに行かなくちゃって思ったんだ。


前の巻はすごく気になるところで終わってしまったし、早く続きを読みたい。


「俺は別に何の予定もないので大丈夫ですよ」


ちらりと碧を見れば、そう返してくれて。


「ありがとう!」


お礼を言ってから、昇降口へ。


聞こえてくる雨の音。
思ったより強く降っていて、少しびっくり。

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