お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
*
碧くんがうちで暮らすようになって1週間。
洋二さん──碧くんのお父さんは、夕食を食べ終わったあとに、
「碧、お嬢とは仲良くなれたか?」
と聞いた。
その言葉にドキリとする。
仲良くなんてなれていないから。
どんな悪口を言われるのかと思えば、彼は。
「うん。今日はお嬢と2人でお絵かきして遊んだ」
まさかの即答。
……うそだ。
わたし、碧くんに“お嬢”なんて呼ばれたことないし、2人でお絵かきもして遊んでない。
今日もはじめて会った時と同じように、わたしはひらがなのワークをやって、碧くんは絵本を読んでたまにお昼寝。
同じ部屋にはいたけどちがうことをしていたわたしたち。
「碧く──」
「楽しかったですよね、お嬢」
わたしの声は遮られ、碧くんはこちらに視線を向ける。
こっちを見た碧くんは、鋭い目つき。
その目に睨まれるから思わず、「たのしかった」とうなずく。