お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。






碧くんがうちで暮らすようになって1週間。
洋二さん──碧くんのお父さんは、夕食を食べ終わったあとに、


「碧、お嬢とは仲良くなれたか?」


と聞いた。


その言葉にドキリとする。
仲良くなんてなれていないから。


どんな悪口を言われるのかと思えば、彼は。


「うん。今日はお嬢と2人でお絵かきして遊んだ」


まさかの即答。


……うそだ。
わたし、碧くんに“お嬢”なんて呼ばれたことないし、2人でお絵かきもして遊んでない。


今日もはじめて会った時と同じように、わたしはひらがなのワークをやって、碧くんは絵本を読んでたまにお昼寝。
同じ部屋にはいたけどちがうことをしていたわたしたち。


「碧く──」
「楽しかったですよね、お嬢」


わたしの声は遮られ、碧くんはこちらに視線を向ける。
こっちを見た碧くんは、鋭い目つき。


その目に睨まれるから思わず、「たのしかった」とうなずく。

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