お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
「濡れるんで行きましょうか」
今度はわたしの手をとって、走り出す碧。
碧1人ならもっと速くいけるはずだけど、しっかりわたしのペースに合わせてくれる。
……わたしのことをドジって言ったりバカにしてくるけど、やっぱり碧は優しい。
その優しさに触れると、碧が好きって気持ちがどんどん大きくなる。
自然につないだ手に、伝わる高めの体温。
わたしの体温は上昇して、心臓のドキドキが加速。
今日もわたしばっかりドキドキしてる。
碧は普通にわたしに触れてくるし、どうやったらもっと距離が縮まるのか、意識してもらえるのか……ぜんぜんわからないや。
そんなことを思いながら走って、黒塗りのいつもの車へと到着。
「お嬢、これ使ってください」
車に乗って、借りた学ランをたたむと、碧から差し出されたハンカチ。
わたしは、碧の学ランを頭にかぶせてもらったおかげでそんなに濡れてない。
濡れているのは、彼のほう。