お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


「ちょうど洗濯しなくちゃって思ってたからいいの!」
「そうなんですか?では、半分ずつ使いましょう」


大人しく1人で使ってくれず、彼はわたしにひざ掛けを半分かけてくれる。


一瞬だけ触れた手が、さっきよりも冷たい。
雨で濡れたせいで冷えてしまったのか。


わたしはひざ掛けの中で手を滑らせるように動かして。
ぎゅっと彼の手を握る。


やっぱり、冷たい手。


「お嬢の手、温かいです」


碧はぽつりとつぶやくように言って、「……うん」小さくうなずく。


それ以外はなにも言えず。
碧も特になにかを言うこともなく、家に帰るまでずっと手をつないでいた。



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