お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。






「そういえばお嬢のクラスに、“サワタリ”って名前の男いますよね?」


次の日の学校、下駄箱で靴を履き替えたあとに碧に小声で聞かれた。


“サワタリ”?
わたしはクラスの人の名前をまだ全員覚えたわけじゃないからわからない。


「わからないや……」
「あとで座席表でも見てよく確認しておいてください。その“サワタリ”がどいつなのか。そして、その男には絶対近づかないでください」


なにやら、真剣な表情の碧。


絶対近づかないでください、って……なんで?
碧がそこまで言うのなんて珍しい。


「その人が、どうかしたの?」


気になって聞いてみれば、彼は。


「そいつは暴走族の総長をやってる危険人物です」


そう答えて。
予想外な答えにびっくり。


この高校は少し厳しめの学校だから、暴走族の人がいるとは思わなかった。


「そいつと関わればお嬢になにか危険があるかもしれないので、本当に気をつけてください。俺もよくお嬢のクラスは見ておきます」
「わかった、気をつける……」


そんな会話をしたあとに、わたしと碧は別々の教室へと入った。

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