お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。



「鷹樹さん、おはよっ!昨日はほんとーにありがとね!すごく助かった!」


自分の席へと行けば、さっそく前の席の鈴宮さんが声をかけてくる。


「お、おはよう。役に立ってよかったよ」
「これ、傘とそのお礼!」


緊張しながら返事をすれば、渡されたものは。
わたしが貸した薄ピンクの折りたたみ傘と、小さな箱。
その小さな箱には、“チョコレート12粒入り”と書かれていた。


「い、いいのに!」


ただ傘を1日貸しただけなのに、お礼なんて……。
なんだか受け取るのが申しわけなくて返そうとすれば、「鷹樹さん、甘いもの好き?」と聞かれる。


甘いものが嫌いというわけじゃない。
むしろ大好き。

日々のおやつにはドーナツやチョコレート、アイスだって食べているくらいだし。


「好きだけど……」


小さく答える。
そうすれば、


「じゃあもらってよ」


にこりと笑う鈴宮さん。
しつこく返すわけにもいかず……「ありがとう」とお礼を言ってありがたく受け取った。

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