青いチェリーは熟れることを知らない② 〜春が来た!と思ったら夏も来た!!〜
 ――その頃、すでに灰色の心のまま重い足取りで駅へと向かっていた三浦の肩を綺麗に染まった指先が叩いた。

「おーい三浦っち。終電まだだし、もうちょっと飲んでいかないかね?」

 振り返ったすぐそこで、にかっと笑った馴染みのある顔に三浦の瞳からは熱い涙があふれた。

「……ずっと好きだった……桜田くんのことずっと好きだったの……っっ!」

「うん……」

「……こんな結末にはなるなんて……っ、若葉さんが現れる前に告白すればよかったっ……!」

「うん……そうだね」

 決して否定することなく抱き締めて背を撫でてくれる長谷川に、嗚咽しながら後悔の念と胸の内を吐き出す三浦は子供のように泣きじゃくっている。
 好きな人に対して、回りくどいことをしていたのは瑞貴も三浦も同じかもしれない。
 けれど、そんなことをしても相手が振り向いてくれない場合……意中の相手が別にいるなら尚更、すこしでも優しさを向けられれば勘違いしてしまう。観察眼の鋭い長谷川は早々と桜田瑞貴の想いを見破り、その裏で一喜一憂する親友の傷がすこしでも浅いうちにと瑞貴に決断を迫ったのだ。

「三浦っちはいい女だよ。あたしが男だったら嫁に欲しいくらいにね☆」

 華やかにメイクの施された長谷川が愛嬌たっぷりにウィンクしながら目を細めて笑った。彼女の瞳の奥には真の優しさが秘められており、三浦に向けられた言葉と眼差しは灰色の心に一筋の光をもたらしてくれる。
 

「……馬鹿ね……」

(でも、ありがとう……)


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