青いチェリーは熟れることを知らない② 〜春が来た!と思ったら夏も来た!!〜
「ほんとこれ泡立ちいいよね」
行きつけのサロンで購入しているという瑞貴のシャンプーとトリートメントを愛用させてもらってから、間違いなく寝癖が減って湿気に弱い髪が随分まとまるようになってきた。
滑らかな泡を両手いっぱいに揉みしだきながら頭を洗い始める。頭皮から髪まで念入りに洗い、一日で一番気の休まるバスルームで今日を振り返る。
と言うのも……帰宅してからは常に瑞貴と一緒のため、ちょっとでも女らしく見て貰えるよう気を張っている自分がいるのだ。
トイレもひとりと言えばひとりだが……長居をするには色々と不都合もあり、結果的に一番ここが落ち着ていられる場所になるのだ。
(昨日と今日で色々あったな……。センパイが急な出張でいなくなっちゃって、鳥頭に泊めてもらって……嘘がバレちゃって。それから……)
瑞貴が帰ってくるのを今か今かと食堂で待っていたちえりが目にした光景は、仲睦まじい瑞貴と三浦の姿だった。
(……今思えば瑞貴センパイの三浦さんへの態度、すごく素っ気なかった……)
「…………」
(でも三浦さん、瑞貴センパイのこと瑞貴って呼んでて……)
見えないところでふたりに何かがあったに違いない。
食堂で顔を合わせたときに見た彼女は、いつもの三浦よりも……ずっと綺麗で積極的な姿がとても印象的だった。
(センパイは三浦さんをなんて呼んでたっけ……?)
ちえりの耳に入ってこなかっただけで、下の名前を呼び捨てにしていた可能性もある。
告白してもらえたからと言って安易に不安が減ったりはしないちえりは、それだけ誰もが目を惹く王子様な瑞貴と"ザ・フツウ"な自分があまりにも違い過ぎて自信がないことの現れかもしれない。
晴れて両想いになったはずのちえりだったが、とたんに不安が押し寄せて。
「寝るのが怖いな……起きたら全部元通りで、これが夢だったらどうしよう……」
瑞貴がくれた言葉。ぬくもり。熱の籠った眼差し――。
『良かった、親にも色々報告したいこともあるしな』
「? そう言えばセンパイ……親に色々報告したいって……」
咄嗟に理解できなかったちえりだが、その時の瑞貴の表情を改めて思い出してみる。
(センパイ、ちょっと照れてて……そうだ、お盆休みに一緒に地元帰らないか? って言ってたんだ。一緒に帰って報告って……んっ!?)
「それってもしかして……私たちのことだべかっっ!?」
頬に熱が集まってくるのがわかる。
そうなると、とうとう親公認? な関係になるかもしれな……ならないかもしれないけれど……
(これはもう夫婦も同然だっぺ!! もう私、胸も腹もいっぱいだーー……ん? 腹?)
全身を洗い終えたちえりは浴槽にその身を沈め、違和感のある腹部へと目を向けると……その瞳には夕食をたっぷり詰め込んで真ん丸に膨れた腹部が視界いっぱいに広がった。
(げっ……!! ヤバイ……私太ったかも!!)
「こ、これは……夢であって欲しかったっ!!」
元々、華奢という言葉など母親のお腹の中に忘れてきたちえりにとって、日々お腹いっぱい食すことがどれだけ命取りになるか。
環境が変わって自然と痩せるだろうと高を括っていた自分はまさに幸せ太りの真っ最中にいるのだと気が付いた。
瑞貴に抱き締められたとき、もしかしたら腹があたっていたかもしれない。
胸よりも出ているかも……と青ざめたちえりは、懸命に湯船の中で腹部マッサージを施していた――。
行きつけのサロンで購入しているという瑞貴のシャンプーとトリートメントを愛用させてもらってから、間違いなく寝癖が減って湿気に弱い髪が随分まとまるようになってきた。
滑らかな泡を両手いっぱいに揉みしだきながら頭を洗い始める。頭皮から髪まで念入りに洗い、一日で一番気の休まるバスルームで今日を振り返る。
と言うのも……帰宅してからは常に瑞貴と一緒のため、ちょっとでも女らしく見て貰えるよう気を張っている自分がいるのだ。
トイレもひとりと言えばひとりだが……長居をするには色々と不都合もあり、結果的に一番ここが落ち着ていられる場所になるのだ。
(昨日と今日で色々あったな……。センパイが急な出張でいなくなっちゃって、鳥頭に泊めてもらって……嘘がバレちゃって。それから……)
瑞貴が帰ってくるのを今か今かと食堂で待っていたちえりが目にした光景は、仲睦まじい瑞貴と三浦の姿だった。
(……今思えば瑞貴センパイの三浦さんへの態度、すごく素っ気なかった……)
「…………」
(でも三浦さん、瑞貴センパイのこと瑞貴って呼んでて……)
見えないところでふたりに何かがあったに違いない。
食堂で顔を合わせたときに見た彼女は、いつもの三浦よりも……ずっと綺麗で積極的な姿がとても印象的だった。
(センパイは三浦さんをなんて呼んでたっけ……?)
ちえりの耳に入ってこなかっただけで、下の名前を呼び捨てにしていた可能性もある。
告白してもらえたからと言って安易に不安が減ったりはしないちえりは、それだけ誰もが目を惹く王子様な瑞貴と"ザ・フツウ"な自分があまりにも違い過ぎて自信がないことの現れかもしれない。
晴れて両想いになったはずのちえりだったが、とたんに不安が押し寄せて。
「寝るのが怖いな……起きたら全部元通りで、これが夢だったらどうしよう……」
瑞貴がくれた言葉。ぬくもり。熱の籠った眼差し――。
『良かった、親にも色々報告したいこともあるしな』
「? そう言えばセンパイ……親に色々報告したいって……」
咄嗟に理解できなかったちえりだが、その時の瑞貴の表情を改めて思い出してみる。
(センパイ、ちょっと照れてて……そうだ、お盆休みに一緒に地元帰らないか? って言ってたんだ。一緒に帰って報告って……んっ!?)
「それってもしかして……私たちのことだべかっっ!?」
頬に熱が集まってくるのがわかる。
そうなると、とうとう親公認? な関係になるかもしれな……ならないかもしれないけれど……
(これはもう夫婦も同然だっぺ!! もう私、胸も腹もいっぱいだーー……ん? 腹?)
全身を洗い終えたちえりは浴槽にその身を沈め、違和感のある腹部へと目を向けると……その瞳には夕食をたっぷり詰め込んで真ん丸に膨れた腹部が視界いっぱいに広がった。
(げっ……!! ヤバイ……私太ったかも!!)
「こ、これは……夢であって欲しかったっ!!」
元々、華奢という言葉など母親のお腹の中に忘れてきたちえりにとって、日々お腹いっぱい食すことがどれだけ命取りになるか。
環境が変わって自然と痩せるだろうと高を括っていた自分はまさに幸せ太りの真っ最中にいるのだと気が付いた。
瑞貴に抱き締められたとき、もしかしたら腹があたっていたかもしれない。
胸よりも出ているかも……と青ざめたちえりは、懸命に湯船の中で腹部マッサージを施していた――。