魔法の恋の行方・キスって何?(シリーズ1 オルロフとエリーゼ)
<湖の畔の小屋・19時20分>
オルロフは椅子から立ち上がり、
壁に背を向けて立った。
「ハグは普通立ってすることが多い。
エリーゼ、ここに立ってみて」
エリーゼとオルロフは向き合った。
「君は少し手を広げてくれればいい」
妖精は指示された通り、腕を上げた。
オルロフは一歩前に出た。
そっと、
本当にそっと妖精を抱き寄せる。
妖精は花の香ではなく、甘いバニラの香りがした。
食べてしまいたいほどに・・・
甘い。
「力を抜いて、俺に寄りかかってくれ・・・」
オルロフは、妖精の耳元でささやいた。
妖精の手が
背中に軽く触れたのに気が付いた。
少し寄りかかってくれている。
オルロフは自分の心と闘っていた。強く抱きしめたい。
「あなたは温かいのね、ヴァーベナの匂いがする」
妖精は腕の中にいる。
だめだ、あせるな、時間はまだある。
それでも、妖精の金の髪に唇を寄せてしまう。
甘い香りと幸福な時間。
妖精の肩が小刻みに震える。
泣いているのか・・・・
「泣かないで・・」
オルロフは少しだけ腕に力を込めた。
この瞬間が永遠に続けばいい。