魔法の恋の行方・キスって何?(シリーズ1 オルロフとエリーゼ)

湖 (3-4)ページ

<湖のほとり・秋・15時>

オルロフは道に迷っていた。
なぜか、道をはずれ
森に迷い込んでしまった。

このへんはちょうど
グスタフ皇国と魔女の国との境目にあたるはずだ。

魔女の国に許可なく入り込むと、豚や牛、鶏に姿を変えられると
みんなが言う。

「本当かどうかわからないが・・」
魔女の国に入り込むと
二度と出られないとも言われる。

異界。

魔女が恐れられているのは確かだ。
強大な魔力は、いろいろな国でも噂になっている。

「陽が暮れる前に、何とか道を見つけなければ」

オルロフは
太陽の位置で方向を定めようと、
空を見上げた。

空中にキラリと光るものが飛び、
放物線を描いて落ちた。

「あれは、なんだ?」
オルロフは、光の落ちた方向に進んだ。

木々の間から
キラキラ光る湖が見えた。

誰か、
長い髪の人が湖に入って行く。
金の髪が風に揺らぐ。

「・・・死ぬ気かっ?!!」

オルロフは全力で走った。
そして湖に走り込み、何とか金の髪の人の腕をつかんだ。

「待てよっ!!」
オルロフは叫んだ。

が、
金の髪の人は抵抗したので、
二人で湖の中に倒れこんだ。

次に叫んだのは金の髪の人だった。
「なにすんのよっ!離してっ!
ばかっ!!」

そう言うなり、オルロフの頬をひっぱたいた。

金の髪の人の瞳は、アメジストの色だが・・
怒りに満ち、(にら)んでいる。

「っ!死ぬ気だったんだろうっ!!」

オルロフは、
いきなり頬をはたかれ、その驚きもこめて大きな声を出した。

「はぁ・・
死ぬわけないじゃないっ!
指輪を探していただけよっ!」

アメジストの瞳は強い光を放ち、
オルロフを捉え(とらえ)た。

二人は向き合った。
ずぶ濡れで。

「誤解するような事するなよ!
まったく!ひどい目にあった・・!」
オルロフは立ち上がり、岸に向かおうとした。



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