魔法の恋の行方・キスって何?(シリーズ1 オルロフとエリーゼ)
<湖の畔の小屋・17時10分>

信じられない!
「いや・・発情って・・・」
オルロフはあっけにとられた。

「いつも交尾をしたがるって」

そう言って、妖精はグラスの緑の
液体を飲み干した。
魔女の国は
独特の慣習や文化があるとは、
聞いていたが・・・

「交尾って・・
君の国では言っているのか・・?」
オルロフは恐る恐る尋ねた。

妖精はまるで、出来の悪い生徒に
理科の授業をするがごとく言った。

「交尾は子どもをつくるためにするの。
そんなことも知らないの?!
あなたは!!」

オルロフは驚き、あきれたが、
好奇心には勝てなかった。
「君は、エリーゼ・・その・・
交尾を・・したことがあるのか?」

妖精はオルロフを睨み(にらみ)つけた。

「あるわけないじゃない!!
昨日、成人の儀式を終えたばかりよっ!」

その言葉を聞いて、
オルロフは力が抜けた気がした。

「でも、一か月後に交尾をしなくちゃいけないのっ!!
それもお母様が決めた相手と!」

妖精は怒りをこめて、
薬草リキュールの瓶をテーブルの上にドンと置いた。

「もう一杯いかが?!それで出て行って!
道はもう、戻っているはずよ!」

オルロフは慎重に言葉を選び、
聞いた。
「君の国は・・不思議だな、
愛情を持たないで・・
その交尾をする・・のか?」

妖精は、自分のグラスに薬草リキュールをついで、一気飲みをした。

妖精の口調は、社会の授業のようになった。
「私たちはね、秋の収穫が終わると交尾をするの。
春から夏にかけて子どもがうまれるから。

愛情って何?
交尾は義務よ!納税と同じ。
国民のね。
国を維持するためには、人が必要でしょう?」

オルロフはあまりの驚きに、
次の言葉が出てこない。
息をするのも忘れるくらい・・・
驚いた。

「その、ものすごく驚いた・・・
俺の国と全然違う・・」

妖精は<あんた、何いってるの?>と言った風に
「私こそびっくりだわ。
グスタフは春の子も、夏の子も、秋、冬の子もいるって聞いて!」

妖精は薬草リキュールを、オルロフのグラスに注いだ。
オルロフもひと口飲んだ。

薬草の匂いがきついが、とろりと甘い。
アルコール度数はかなり高いだろう。

妖精は、暖炉の火をおこしながら言った。
「一年中発情って、どう考えてもおかしいわ」


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