不可侵ガール、夢幻







「眩しい、」



眩しい。

口に出してしまったのは、瞼を開けるなり注いがれた光のせいだ。夕日。さっきとは違う赤とオレンジのつよくて温かいそれのせい。

突っ伏していた上体を起こすと余白はまだ途中で、時計の針は5分ほど、あまりにも進んでいなくて、唱えていた筈の『私は悪くない』という文言も消え去って存在は無い。

どこからが、それで。
それがどこからなのか。

知らないけどきっと繰り返してきた事柄で、この世界だと空は飛べないし星は降ってこないし、あいつはいないし、眩しすぎる。

ああでもぜったい、すぐにでもラインを越えて行ける位置で待っていてくれたりしないから。

私が望めば、ってそういうこと、なのに、ね。



「むげん、か」



口に出した瞬間あの心地が失われてしまう。そんな気持ちが競ってしかたない。

秘密。内緒。
言い出したくない。
言えない。だれにも言いたくない。

私だけの素晴らしい世界だった。

あの星の、雨の、うつくしい夜は私の。












夢幻で居続けて。





〘 fin 〙








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